ツボのとらえ方

経穴が生命体に出現したのはどの様な経過によるかは別にしても、気の治療点であることは間違いない。

原初は単純な点と線であったものが、多くの時間と人の手により複雑なネットワークに進化発展してきたのだ。


今では理論も整備され、穴性学もある。だが、最終的に選び出すのは人の手なのだ。

選び出した経穴の範囲の中から現場に直結する一点に絞り込むのは手の感覚でしかない。


気の臨床研究会「三丹塾」は「気」に特化して感覚を養う塾。そこでは、望診で気の偏在を診る目を養う事や、

被験者の身体から少し手を離し、その手をゆっくり移動させながら気の濃淡を感じる事や、指を経穴に徐々に近づけてほんの少し触れ、身体内部との繋がりを感じられるように感覚を研ぎ澄ましてゆく。


感覚を育てるにはそれをモニターする者の役割が特に大事となる。

施術者は、モニターから実況されることで自身の感覚との整合性を知る。

触れる者と触れられる者双方の感覚を言葉にする訓練がそれ故に大事なのだ。


さらに治療点を鍉鍼で示し、それを0・数ミリ単位で修正し絞り込む、角度と治療ポイントまでの深さも修正して行く。

こうした事の繰り返しが、施術する者の「気」の感覚を育てより確かな経穴を捉える事になる。


鍼は単に物理的刺激のみではなく、鍼灸師の治療方針全般も意識され鍼に込められる。

その意識こそが病体に変化をもたらすスイッチとなるのだ。患者の「気」は心身の情報を包含して存在している。

その「気」を認識するのもまた鍼灸師の「気」なのである。経穴がお互いの意識の場であると言う所以もそこにあるのだ。

 

上記の文は医道の日本9月号「ツボのとらえ方」に投稿した文の抜粋です。